初めに、私が歯医者さんになった理由をお話します
きっかけは、高校生のときに青年海外協力隊に惹かれて、世界で病気に苦しむ人たちを助けたいと思ったことでした。
中学、高校は関東学院に通い、友愛と奉仕の精神の教えを受けました。
世界の恵まれない人々の存在やボランティア活動は、いつもとても身近なもので、その頃耳にした、ネパールの医療の行き届かない村の話は、いつまでも心に残っていました。
そして高校卒業後、神奈川歯科大学に入学しました。
私は中学から大学まで、とても健康で、どちらかというと真面目な生徒でした。
大学での講義は必ず一番前に座り、絶対に聞き漏らさないように努力して勉強していました。
当時の授業料を知り、しっかり聞かないともったいないと思ったからです。
なかでも興味深く、熱心に耳を傾けたのは外科の講義でしたね。
人体という小宇宙と、外科の治療の物語は飛びぬけて面白く、今でもよく覚えています。
はれて歯科医師となった時、ふと故郷を見てみると、そこにもネパールと同じように、辛く苦しい思いで日々を過ごしている人たちがいることに気がつきました。
世界ではなくても、私のすぐ近くに、私を必要とする病気の人たちがいたんですね。
歯、歯茎、それらを総じた口腔内のトラブルから表れる身体全体への影響、不調。
そしてその病んだ身体に悩まされた、その人の心の痛みを、ホスピタリティ(共に生きること)をもって受け止めていこうと決めました。
1986年、初声歯科クリニック開院
2010年、医療法人社団hasse-family開設
私は横浜市磯子に生まれ、幼少は横浜市久里浜、その後は三浦市小網代で育ちました。
この三浦市初声町に開院したのは1986年のことで、それ以来、クライアントみなさまへの医療提供はもとより、同地域の学校歯科医、休日急患診療担当医、障害者歯科担当医、介護認定審査会担当医として活動をさせていただいています。
初声歯科のモットーは、
「やさしさときめ細かい説明、誠実な治療」
「予防と最新治療の提供と還元」
というものですが、実はこれらは、開院当初からあったわけではありません。
私が思い願う医療提供、ホスピタリティをもったかかわりを、縁あって医院に繋がってくれたスタッフたちが受け入れてくれ、そしてみなさまに伝えようとしてくれた結果、月日を重ねて形になってきたものです。
開院当初、幼少であったクライアントさんは、その成長を見つめているうちにどんどん立派な大人になって、今ではお子さんと共に来院されるようになりました。
そうしたクライアントさんが増えていくと同時に、多くのスタッフもまた巣立っていき、自分たちの地域で新たに活躍しています。
初声歯科クリニックは一歯科医療機関として、また一教育機関としても、かかわる人たちの人生の一部分を共有して成り立っています。
こうした繋がり、言うならば社会の最小単位である「家族」とも似たような繋がりを、永続的に守っていきたいという願いから、2010年11月、医療法人社団hasse-familyを設立しました。
歯医者さんに治療に行くなんてナンセンス
こんなことを言うと、怒られてしまうかもしれませんね。
けれども歯医者さんで治療と言うと、もう、決まっています。
「痛くて、怖くて、嫌な思い」
みなさまが自分ではどうしようもなくなった時、決心しなくてはならないのは、歯医者さんに行って「痛くて、怖くて、嫌な思い」をすることです。
私たちはその決心を、チャンスに繋げたいと考えています。
その後の人生で「痛くて、怖くて、嫌な思い」を繰り返さないために、カウンセリングのお時間を頂戴し、「予防」について説明をさせていただいています。
「予防」のメリット
- 歯周病、虫歯は「予防」できる
- 「予防」は赤ちゃんからお年寄りまで、副作用がない上に、一生涯にわたって効果がある
- 「予防」はいつ始めても遅くはない
- 「予防」は「痛くて、怖くて、嫌な思い」をしない
- 「予防」は気持ちがいい上に、綺麗になれる
- 「予防」にかかる費用は、助長して積み重なっていく治療費と比べて安価である
- 歯周病、虫歯の「予防」は、全身における様々な怖い病気の予防、改善に役立つので、建設的で合理的
ざっと挙げただけでもこれだけのメリットがある「予防」ですが、このメリットを知らされていない人たちが、とても多くいらっしゃいます。
またこれらのメリットを知っていたとしても、「予防」のために、定期的に歯医者さんに通うことが難しい人たちがいらっしゃることも事実です。
私たちはクライアントお一人お一人に寄り添って、どうしたら「予防」の理解を得られるか、「予防」を続けていくことができるかを考え、工夫を凝らし、お手伝いすることに尽力しています。
2011年、「歯科口腔保健法」成立
2011年3月11日、未曾有の事態である東北大震災がおこりました。
その被害と影響は甚大かつ深刻であり、また震災をきっかけとして、大変多くの社会的問題が浮き彫りとなっています。
そうした中、2011年8月、初めての歯科基本法である「歯科口腔保健の推進に関する法律」(通称「歯科口腔保健法」)が、衆議院全会一致にて可決されました。
そこには「口腔の健康が、国民が健康で質の高い生活を営む上で、基礎的かつ重要な役割を果たしている」と述べられています。
現在では口腔内のトラブルが、多くの病的死因とかかわっていることがわかっています。
生活習慣病から始まる全身疾患、そしてそれらの合併症は、すべて、口腔内トラブルと関連しています。
歯科口腔保健法の基本理念には、口腔内の健康がまさに身体全体の健康と繋がっていることをふまえ、疾病対策(=治療)ではなく、発症を防ぐための「保健」「予防」、そして「QOL(クオリティーオブライフ)の向上」が掲げられています。
「他の先進国と比べると、日本のデンタルIQは低い」と言われてから久しく、それを裏付けるかのように医療費の増加は止まることを知りませんでしたが、これでようやく、国全体で国民の健康を守っていく、スタートラインができたのではないかと思います。
- 今、目の前にいる、このひとの、心と身体の痛みをとること。(全人的治療)
- そのひとが、自分自身の社会に戻り、そこで普通(健康)に暮らせるようにすること。(健康回復)
- そのひとにとって、歯科治療が生涯必要なくなること。(永続的予防)
- 上記事由により、個人あるいは社会全体の医療費削減を期待する。(経済効果)
これらは、初声歯科クリニックが追求する社会的ミッションです。
現在の日本が抱えている社会的問題の多くは、個々人の心身の健康とQOLの向上によって、解決に向かうと考えては間違っているでしょうか。
私たちは専門家として、知識、技術の研鑽と経験に基づく「保健」「予防」の啓蒙に努め、そして社会の一員として、それを実現するための役割を担っていきたいと考えています。